何をもってそれを「誰の曲」と認識するか、という徒然。
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最近「うっせぇわ」という曲が流行っていますね。
世間体をディスるような攻撃的なアンチテーゼ的歌詞を、Adoさんという18歳女子高生がカッコ良くがなり歌い上げていることが話題かと存じます。
自分の身の回りでは、Adoさんの名前だけが一人歩きして、「うっせぇわ」を「18歳女子高生シンガーソングライターのAdoさんの歌」と思っている人が多くて驚きました。
作詞作曲したのはボカロPのsyudouさんという方です。
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僕が「うっせぇわ」を初めて知ったのはニコニコ動画でした。
ニコボックスというニコニコ動画の音声のみを再生できるアプリを使って曲を探索していたときにランキングに上位にあったのを再生してみたのがきっかけです。
「ニコ動で聴いた」ということもあって、僕の中ではAdoさんはいわゆる「歌い手」という認識だったのですが、後日テレビで話題の曲として「うっせぇわ」が紹介されたり、親戚も知っていたりして、「そんなに有名な曲だったのか!」と衝撃を受けました。
しばらく前はネット世界はネット世界でやや独立した文化が築かれているような感覚がありましたが、スマホが普及したあたりからネットとリアルは垣根がほとんどなくなっているのかもしれないですね。ネット住民(?)としてはリアルと融合しているという現実に感覚が追いつかない(笑)
「ネットで流行」とはすなわち「リアルでの流行」とほとんど同じ、つまりただの「流行」。
「どこで流行っている」の「どこ」というカテゴリーの中に「ネット」という文字はなくなりつつあるのかもしれません。
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少々脱線しましたが、話を「うっせぇわ」に戻します。
僕はこの曲を作ったsyudouさんというボカロPが結構好きで、……ファンと言えるほど追っているわけではないのですが、サブスクを使ってアルバムを聴いたりしていました。
曲が好きというのももちろんありますが、ボカロPを選ぶときに個人的に重要な要素はボカロの調教です。僕はsyudouさんの初音ミクの声が好きなので「歌ってみた」じゃなくて本家楽曲を聴いていました。特に「ビターチョコデコレーション」という曲は、曲もMVも大好き。
ということで、個人的には「『ビターチョコデコレーション』のsyudouさんの曲をAdoさんという歌い手さんが歌っている『うっせぇわ』」という認識だったのですが、前述したように、家族や親戚と話をするとほとんど「うっせぇわ」を「Adoさんの曲」だと認識しているようで、少しハッとさせられる部分がありました。
流行りの曲を聴いたときに「誰の曲」になるかというと、一般的に「その歌手の曲」と認識する人が多いのでしょうね。
例えばジャニーズなどアイドルソングも、楽曲提供という形で別の人が作った歌を歌うことが多いと思うのですが、「嵐の曲が好き(仮)」みたいな感じで、ざっくりと「嵐の歌(仮)」と認識されている印象があります。
もちろん、プロデュースの方針や提供するイメージによって楽曲の内容に偏りが出るということは大いにあると思うので、「嵐のプロデュース方針に則った楽曲が好き」という意味での「嵐の曲が好き」ということ考えられますが、そこまで厳密に意識して「嵐の曲が好き」と言う人は少ない気がします(笑)
「曲」とか「歌」とか、一言で呼んでしまうけど、実はいろんな要素が混ざり合ってひとつになっているので、「誰の曲か」というのは、掘り下げていくと奥が深い話題かもしれませんねぇ。
さくっと把握できるだけでも作詞/作曲/歌手の要素があるし、もっと言えば編曲とか楽器のプレイヤーでも楽曲は変わってくるのでしょうし、僕は音楽界隈の人間じゃないのでよくわかりませんがプロデュースとかディレクションという要素も影響しているかと思います。(ボカロ系とかネット系?の場合は、メジャー楽曲に比べてセルフプロデュース、セルフディレクションという場合も多いかもしれませんけど…。)
シンガーソングライターであれば「○○さんの曲」と称しやすいですが、
「○○さんの作るメロディが好き」
「○○さんの歌い方が好き」
……となってくると「○○さんの曲」と呼ぶときにちょっと注釈が欲しくなってきます。
僕が「歌い手(※歌ってみたをしている人)」を好きと呼ぶときには、その人の選曲センスも含めて「○○さんが好き」と呼ぶことが多い気がします。
「○○さんの歌詞が好き」という場合だと「○○さんの曲」と呼ぶにはやや抵抗を感じる気もしますが、曲を好きになるときに「歌詞が良い」という理由のときも多いと思うので「作詞家さんの曲」と呼んでも悪くは無いはずですよね…。楽曲制作の方法が詩先であれば尚更。
「○○さんの編曲が好き」
「○○さんのプロデュースが好き」
「○○さんのドラムが好き」
……ということもあると思うんですけどこの域までくるとだいぶマニアックな感じがしてきますね(笑)
なにやら重箱の隅をつつくような話になってしまいましたが、僕は「誰が作った曲を」「誰が歌っているのか」を少し意識的に認識するようになっているのかもしれません。ボカロ曲や歌ってみたの文化に身を染めているせいかなぁ。
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少々脱線しましたが、話を「うっせぇわ」に戻します。(2回目)
「うっせぇわ」がテレビで紹介されるときに必ずと言って良いほど「18歳女子高生」の一言が添えられている気がします。
改めて「18歳女子高生」という謳い文句を踏まえて「誰の曲」という認識の仕方について考えると「お前ら、女子高生好きだなぁ!」という気持ちになりました(笑)
お前らっていうのは世間のことなんですけど。
十代とか、高校生とか、現役大学生とか、最年少記録とか、「若いのにすごい」みたいな風潮ってわりと強固ですよね。
年齢だけじゃなくて、性別とか、出身大学とか、「だから何?」みたいな肩書きが「意味のある謳い文句」のような顔をして掲げられているときも多い気がします。うーん。
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みなさんは「誰の曲」をどう認識していますか?
長い割に着地点のない話でした。
<おわり>
初出:ShortNote 2021/03/02